[review] Rhetorica Review

垣貫城二|悲しみの記憶術

DESCRIPTION

レビュー対象=『悲しみの忘れ方 DOCUMENTARY of 乃木坂46』
垣貫城二=子どもが好きなわけじゃない、大人が嫌いなだけ。

 本作『悲しみの忘れ方 DOCUMENTARY of 乃木坂46』は、『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』をはじめとして、映画ファンからも高い評価を受けた「AKB48グループ」のドキュメンタリー・シリーズの「乃木坂46」版である。
 「Show must go on」の見どころが、良くも悪くも壮絶なアイドル現場のスキャンダラスな面を切り取った素材にあったのに対して、「悲しみの忘れ方」のユニークな点は、一本の映画として一貫した演出、編集が加わっていることにあるだろう。
 田舎の女子高生の登校風景にナレーションが被さり、「本作品の語りは、メンバーの母親たちの言葉である」とキャプションが挿入されたところで本編はスタートする。主要メンバーである7人のアイドルに焦点を当て、オーディション時から現在までの豊富な映像素材や回想を中心としたインタビュー、そして母親たちの語りといった素材を、ほぼ時系列順に提示することで、このアイドルグループの特性を徐々に理解できる構成になっている。
 アイドル映画として特異な点は、彼女たちのネクラ性に焦点を当てていることだろう。デビュー以前に学校で悪質ないじめにあっていたことや、不登校であった過去などが、メンバーと母親の回想によって語られる。これらのシーンでは、終始冷たい音色のBGMが使用され、スロー再生を多用した無機質なイメージ映像のようなショットが頻繁にインサートされる。メンバーの暗い過去に対応した暗い画面作りに成功している。
 実質的な主人公である、生駒里奈の魅力に言及しないことには、本作のレビューとしては片手落ちだろう。しかし残念なことに筆者は、アイドルとして、いや一人の少女としてあまりにも規格外な彼女を形容する語彙を持ち合わせていない。本作を鑑賞することで、彼女の魅力を多くの人が感じることを願う。
 顔を隠した女優を演出したと思しき、アイドル達とは全く無関係なカットや、シーンを盛り上げるための過剰な劇伴など、ドキュメンタリーとしては反則な点も散見されるが、ラストに置かれたとある映画的な仕掛けを見た後には、それらの欠点もすべてどうでもいいものだと思えるはずだ。