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レビュー対象=人間のようなAIPole=エンジニア。対話系のAIサービスでビジネスしている人。最近は人工知能にご執心。初出=Rhetorica #03(URL)ほかのレビューも読む(URL)
レビュー対象=人間のようなAIPole=エンジニア。対話系のAIサービスでビジネスしている人。最近は人工知能にご執心。初出=Rhetorica #03(URL)ほかのレビューも読む(URL)
ジョージ・ザルカダキス『AIは「心」を持てるのか?』長尾高弘訳、日経BP社、二〇一五年
いま巷で騒がれているAIは、人間を作るための部品を作るための技術だと言ってよい。技術そのものはこれまでもあったものだけれど、近年ビックデータ処理が可能になったおかげで、ものすごい勢いで精度が上がってきている。そんなこんなで、数年だか十数年後だかにはシンギュラリティがやってきて、人工知能が人を越えるとか言われているし、みんなそのうちドラえもんみたいなロボットができるんだろうと思っているかもしれない。
しかし、それは簡単なことではない。確かに、画像を認識したりデータを識別したりすることにおいては、AIは高性能になってきた。それでも、たとえば人間がAIと自然に会話をするだけでも非常に難しい。SiriやAmazon Echoのような指示待ちのエージェント──明確な意図がある文章を理解し言われた「命令」の実行者にはなりえても、人間にはほど遠い。
とりわけAIが会話において苦手とするのは、世間話のような状況において、違和感のない応答を返すことだ。コミュニケーション自体が目的化しているような会話では、話者がどんな文脈や意思に基いて発話しているのかをAIが読み取れない*01。そのような場面では、話者はそもそも自分の意図を意識していないからだ。そして、コミュニケーションの大部分はそういった「意図のない会話」であって、このことが自然対話AIの実現を難しくしている。
逆に、はっきりした目的と正解が存在する問いについては、AIは明確かつ迅速に答え[アウトプット]を返すことができる。だから、AIでビジネスをしている者としては、そういった問い──しかも人間の主体的な意志が介在する必要のない問い──に答える仕事は、人間の代わりにAIがやってくれるようになると確信している。
AIは、正解の存在する問いに対してアウトプットを出すことができると書いた。これに対して、答えがあるかどうかわからない問いに対して、正しそうなアウトプットを暫定的に出すこと、また、アウトプットを出しながら自分のかたちを少しずつ規定していくことは、今のAIでは実現できない。その技術を追い求める夢が、いつの段階で叶うのか、はたまた叶わないのかはいまの私にはわからない。漫画『鋼の錬金術師』を思い出してほしい。主人公であるエドワード・エルリックは人体錬成を試み、そして、失敗する。しかし、なぜ人体錬成が失敗したのかという部分には、あまり光が当たらない。私たちが知ることになるのは──場合によっては乗り越えるのは、その暗い部分である。