[review] Disc Review: tofubeats – FANTASY CLUB

ディスク・レビュー|特集=FANTASY CLUB(tofubeats)

CONTENTS

azumamiko|特集に寄せて POKORADI archive vol.02「問い続けること、問いを証明できないこと、その間で。」 tomad|FANTASY CLUB ―象徴から再び風景へ― 米澤慎太朗|きみが持ってるものを見せて Miii|“あの頃”から僕たちがずっと考えていた“ファンタジー”について 太田知也|Time for a pint. ANISOTRONICA|Stay real, or go to the JUSCO. texiyama|信じたいことは信じにくいから Jun Yokoyama|音を信じて

fantasy_club_web_revrevrevrev特集に寄せて

 tofubeatsの新作『FANTASY CLUB』は内省的な作品だと言われている。たしかに以前よりプライベートな空間を想起させる作風は、なにかを、だれかを、どこかをリプレゼントすることから一歩退いて、リラックスした印象を抱かせる。他方、作品の言葉と音像は、あくまで商品として磨かれツルツルとしており、彼の心根みたいなものは周到に消されている。内省的な作品にありがちな逃避への誘いや閉塞は感じられず、どこか乾いた砂のような手触りがある。

 なにかを分かりやすく表象しているものでなければ、生々しい心情の吐露でもない。それでは、歌のなかで幾度も投げかけられる言葉──「最近好きなアルバムあるかい」「show me what you got」のような──は誰に向けての問いかけなのだろうか?それはきっと、ステージで一般化された「あなた」でもなければ、私秘的な空間にいる「あなた」でもない。tofubeatsの言う本作のテーマ「ポスト・トゥルース」を自分なりに解釈すれば、問いかけの相手は、バラバラな現実を見て、そしてここにはいない「あなたがた」なのだと思う。

 今回の企画では、それぞれ異なる奥行きと主張が込められたレビューが集まった。レビュアーの立場もバラバラで、なにか統一見解があるわけではない。ただ、もしここで書かれていることが幾許かの「真実」に触れているのならば、なかなか相応しい応答になっているのではないかと私は信じている。「show me what you got」を真に受けた結果かもしれない。もしくはまだ「気づかない」ふりをしているだけなのかもしれないにせよ……。

[文=azumamiko]