tofubeatsがPOPEYEに書いていた連載「ガチ恋ファンタジークラブ」には、「自分が好きな曲を、相手の女の子も好きだったら」という中学生さながらの妄想が描かれていた──ナイスなトラックメイカーはどこまでもピュア。
SHOW ME WHAT YOU GOT(=きみが持ってるものを見せて)
──tofubeats – WHAT YOU GOT
些細な愛が、彼なりの精一杯の告白だとしたら?「WHAT YOU GOT」は、そんなtofubeatsの不器用すぎるラブソングだ。君の好きな音を聴きたい、あるいは一緒に新しい音を聞きたいくらいの淡い期待感で。
DJもきっとそんな行為の延長線上にある。フロアの様子を見ながら、見知らぬお客さんに“この曲よくない?”とさりげなくすすめる。フロアの矢印はいつもバラバラで、お客さんはDJの気持ちを受け取ったり、受け取らなかったりする。でも、ブースで汗をかくDJを見ていると、ひとりよがりだったり、MCがうまくできなかったり、スキルが下手くそだったりしても、その音が好きな気持ちは直に伝わってくる。
思い出して見ると、好きな人に好きな音楽を自分から勧めたことはなかった気がする。それでも、自分の好きな曲を誰かに聴かせたくて、でもそんな相手もいなくて、高校時代にDJを始めた。
その頃に聞いていたのは日本語ラップだった。NORIKIYOとかSEEDA、サイプレス上野とロベルト吉野が波に乗っていて、tofubeatsの音源を初めて買ったのも、JET SETで取り扱いがあったブートレグCD-Rだった。
でも同時に、好きな子が好きなKPOPアイドルをTSUTAYAで借りたり、J-Rockを勉強したりしていた。少しでも近づきたい気持ちで、もっと好きな子のことが知りたくて、話を合わせるために、全然知らない音楽を聴いていた。その子に振り向いてもらえる日はなかったけど、普通にその音楽にハマってたりしてた。
つい先日のこと。付き合いはじめたばかりの彼女と一緒にいるとき、ふと『FANTASY CLUB』を流してみた。
「わたしあんまトーフビーツとか聞かないんだよね」。僕はそっとiPhoneのプレイボタンを止めた。