[dialogue] POKORADI × Fantasy Club

POKORADI archive vol.02「問い続けること、問いを証明できないこと、その間で。」

LEADING

Rhetorica Disc Review 特集=FANTASY CLUB(tofubeats)特別編として、POKORADI archive vol.02をお届する。「ポコラヂ」はRhetoricaのtexiyama、Maltine Record主催のtomad、写真家の横山純を中心とし、毎月不定期で配信されるインターネット・ラジオ。今回は3rd Album『FANTASY CLUB』発売を記念して、tofubeatsをゲストに招いた2017年5月16日放送回の一部を再構成し、収録した。座談会:tofubeats+okadada+texiyama+tomad+Jun Yokoyama
写真:Jun Yokoyama
構成:azumamiko, C.Kageyama

CONTENTS

azumamiko|特集に寄せて POKORADI archive vol.02「問い続けること、問いを証明できないこと、その間で。」 tomad|FANTASY CLUB ―象徴から再び風景へ― 米澤慎太朗|きみが持ってるものを見せて Miii|“あの頃”から僕たちがずっと考えていた“ファンタジー”について 太田知也|Time for a pint. Ninja|(Coming Soon) texiyama|(Coming Soon) 横山純|(Coming Soon)

DSC8542前2作とは趣きの違う『FANTASY CLUB』はどう作られたか?texiyama 今回のポコラジはtofubeatsのニューアルバム『FANTASY CLUB』について、ご本人を交えつつ喋っていこうという回です。これは重要な作品なんじゃないかということを俺は勝手に思っている。いや、世界の人は言っているはずだ!
tofubeats お願いします!
tomad とりあえず初めて聴いたときに過去のメジャー2枚(『First Album』、『POSITIVE』)と今作は根本的に方向性が違ってるなって思いました。前の2枚は結構オムニバス的だったと思うんですけど、今回の『FANTASY CLUB』はCD1枚を通して楽しんでくださいっていうか、通して聴くことに意味のあるアルバムになってるのかなと。そのあたりはどうですか?
tofubeats マジの質問やな(笑)。これまでのメジャー2作と違う理由には、自分の気分的な要因とレーベルとの契約上のタイミングの2つの要因がありますね。
 自分の気分的な要因としては、これまでの『First Album』『POSITIVE』っていうのは、シングルを出してからアルバムを作らなくちゃいけないという流れがあったわけですよ。だから先にフックのある曲を作って、その後アルバムに収斂させていく──という手順でやっていたので、今回はそれを変えてみようと。
 レーベルのタイミングの要因だと、僕たちの場合は契約が2枚で1シーズンなんですよ。なので3枚目の『FANTASY CLUB』から次のシーズンに変わるっていうこともあって、制作のやり方を変えてみましょうと。今まではシングルをCDで絶対出さなきゃいけなかったんですよ。だけど、今回はアルバムに先んじた先行シングルは配信だけでいいということになったんですね。すると、必然的に次に出すCDはアルバムになるじゃないですか。こういうシステムになると、アルバムを最初から見据えて制作ができるというか、見据えてやらざるを得ない。逆にシングルはその中から優秀なものを切っていきましょうっていう進め方をやらせていただけたのが、今までの2枚と大きく違うところかなと。前作(『POSITIVE』)がやっぱり頭でっかちな作り方になってしまったっていう反省があったので、それも踏まえて今回はゴールを決めてやりましょうっていう意識がありました。
tomad なるほどー。どれくらいから構想を練り始めたんですか?
tofubeats 厳密には『POSITIVE』ができた後から作業は始まってました。あと今回収録されている「FANTASY CLUB」と「OPEN YOUR HEART」は、『POSITIVE』ができる前にデモが完成していた曲なんですよ。『POSITIVE』からは落としたんだけど、「FANTASY CLUB」と「OPEN YOUR HEART」のデモは良かったから、これらをどうにか成仏させる方法はないかなみたいなところから始まってるかもしれないですね。
tomad その時は『POSITIVE』に収録するテンションではないなって感じだったんですよね?
tofubeats 『POSITIVE』は歌モノに絞りたいっていうのがあったんで、「I Believe In You」以外のインストは全部外したんですよね。
tomad 結構、長期間にわたって構想を練ってたってことっすよね?
tofubeats 本当はもうちょい早く出る予定だったんですけど、プロデュースとかアニメの楽曲とか高カロリーな仕事が多かったというのもあって、会社的にも急がなくて大丈夫みたいなムードの中で進めさせてもらえたというのは、今回すごいよかったな。納期が長かったんで、後悔というか、もうちょい出来たな〜性が低い。80、90%まで作るのは一生懸命やれば、そこまで時間がかからないけど、そこからジワジワ完成度を高めていくのってやっぱり時間が必要になるので、その詰めの時間を前の2作よりは長く持てました。DSC8482『FANTASY CLUB』は自分への問いであるtexiyama この『FANTASY CLUB』って何か問いを設定して、それに対して応答するというようなコンセプトがあのではないかと感じたのですが。
tofubeats うん、このアルバムは問いですね。そのことは途中からめっちゃ意識しました。そして、あくまでも自分への問いであって、他人への問いにならないように歌詞を直していったんですよ。
 例えば、「SHOPPING MALL」の歌詞が攻撃的っていう意見がたまにあるけど、そんなに攻撃するようなことは言ってないはず。J-POPをあんまり聴かなくなったことを自覚したときに、自分が今まで聴いてきた音楽と対峙して、自分の体験を振り返って、いろんなことを考えたりするのが、好きなんだっていうことを思い出したんですよ。
tomad 何かを問うような曲とかって、そのまま出すとすごい泥臭くなりがちじゃないですか。でもこのアルバム聴いてそういう泥臭さは感じないですね。
tofubeats そうそう、それが他人に向けての問いではなく、自分に対して問いかけることの意義ですね。
texiyama 問いについて尋ねたのは、僕はやっぱりロンドンから帰ってきてから、東京って街にはあんまり問いがないなってことを考え続けているからなんですよ。
tofubeats たしかに東京を見ていると、「考えてないよな?」と思うことはある。問いがないっていうか、そんなこと考えなくても生きていける。でも、「ロンドンから帰ってきて、みんな問いがないんだよね」って言ってるtexiyamaくんも「ほんまに自分に対して問いを持ってんの?」って証明できないじゃないですか。俺にはあるのは伝わってるけど。
横山 重苦しく考えれば勝ちみたいな雰囲気でもないし、「自分は真剣に考えた」って主張したところで、いろんな尺度で測られてるわけですよね。
tofubeats そうなんですよ。こんなアルバム通して聴いてられんっていう人もいっぱいいると思いますし、とにかく「水星」みたいなんがもう一曲聴きたいねんけど、みたいな人もめっちゃいるんですよね。
 まあだから、わかってないことからスタートさせよう、でもわからないっていうことに対して逃げずにちゃんと正面から向き合って、神戸でじっくりわからなさと向き合ったものを残しておけば、10年後くらいに聴いたら、いい感じになる気がする。当時の若tofubeatsはわかってなかったなって。
texiyama 若tofubeats(笑)まあ確かにそうですね、証明できないっていうのはあるっすよね。
tofubeats そうなんすよ、メジャーに行って2枚アルバムをリリースして思ったんですけど、それで誰が免許くれるの?ということ。メジャーデビューして証明書をもらえることってないんですよ、ミリオンセラーするわけでもないし。そんなの無しでやってるわけですから、もうよう分からんなっていう感じっすね。DSC8514show me what you got横山 じゃあ結構不安なんですか?
tofubeats 不安ですよ。いつも言ってますけど、30歳くらいで辞めてる可能性大いにありますよ。
横山 自分自身の不安もあるし、世間がこんな感じでじわじわっと進んでしまっているっていう不安もある。陰キャがよく頑張ってアルバム出し続けてるなと思うよね。
tofubeats 陰キャが言うな、やめてくださいよ(笑)。 でも、やっぱある意味、全国の陰キャたちに、「やっぱりお前ら夢は捨てんなよ」というのは入ってるかもしれない。陰キャのまま行くっていうのはすごい大事。
texiyama オーーー!ヒップホップだ。
横山 なるほどね。神戸に神門(ゴート)っていう別のラッパーがいて、彼も陰キャじゃないけど、ヤンキーではないラッパーとして、例えば、彼女がいないってことを歌ってたり、割と早い段階でそういうことをしてた人なんだよね。tofubeatsも結構近いなと思うねん。
tofubeats うーん。持ってないアピールはダメ。例えば、パソコン音楽クラブの2人をハードオフビーツに連れてったときに、彼女が今のところ2人ともいないって聞いて、「もし彼女できたらどうすんの?」って質問したんですよ。そしたら、「お互いを殺す」って言ったんですよ。「どっちかに彼女ができたらどっちか殺す」って。
一同 ええー(爆笑)
tofubeats 持ってないアピールは未来の自分を縛ることになると思うから、俺は持ってるものは言うみたいなことは意識している。オタクIN THE HOODで紹介していただきましたけど、年の割にはまあまあ広い家に住んでる。まあオタクですからみたいな言い方はしますけど、過剰な貧乏アピールみたいなのはめっちゃ俺はダサいと思うんです。
横山──別に大きくブってるわけでもないし、いじけているわけでもないし、持ってるものをどう見せるかっていうことだね。
tofubeats そうそうそう。DSC8537リアルとフェイクがプリズム状に煌めくtexiyama そうすると、今回はめっちゃリアルなアルバムってことになるんですかね?
横山 texiyamaくんは『FANTASY CLUB』がリアルなアルバムなのかフェイクなアルバムなのかっていうことをずっと悩んでるんですよ。
tofubeats え、どういうことですか?
texiyama パッケージ全体としてはめっちゃリアルだし、さっき言ったように問いを持っている作品であると思うんですけど、かたや歌舞いてる曲もあるじゃないですか。「SHOPPING MALL」とか。
tofubeats なるほどね。答えは簡単で、メジャーから出すんだから、最低限のダイナミズムはいるよってことですね。フックになることだったりとか、「BABY」みたいな要素っていうのは必要。そういうのはもちろん多少はあって、ただ前の2作と比べたら大幅に抑えているっていう感じです。
texiyama そうですよね。リアルなことだけやってても仕方がない。つまり身の丈にあった自分ができることだけをただ「私はこれが好きでこうやってます」って言っててもダメだし、逆に既に世の中にある既存の文脈やシーンに打ち込むようなものばっかりやってても、全然リアルじゃなくなっちゃう。
tomad 『POSITIVE』とか『First Album』に比べたら、リアルな部分が入ってきてて、それはある意味、今までのtofubeatsに戻ってきたのかなっていう気がして、僕的には、なんかすごい聴きやすかった……。あとは例えば、この人が聴いたらリアルに聞こえるけど、この人が聴いたらフェイクに聴こえるみたいな、そういう構造とかもあると思うんで、そういうことがプリズム状に煌めいてるアルバムになってるんじゃないかなあと。
tofubeats 『lost decade』っぽい雰囲気で作ろうっていうのは初期の段階でスタッフに共有した情報ではありますね。
tomad でも『lost decade』の方が、たぶん上下の振れ幅が大きくて、今回の方がまとまってるっすよね。
tofubeats そうそう。『lost decade』の方は『First Album』的な部分も内包し始めてて、やっぱワーナーで流通することに決まって、色々考えたんですよ。「So What!?」は納品一週間前に「このアルバムは暗い!」ってなって焦って作った曲なんですよ。今回はそういうことをしなくて済んだ。
tomad せっかく出すんだから明るい曲も入れなきゃみたいなのもあったんと思うんですけど、デビューして数作を経た上で、そういう判断をするっていうのは、結構大きな違いですよね。
tofubeats これが年の功かと思ったっすね。まだメジャー4年目ですけど……(笑)DSC8524「あなたのリアルをステージで表現してください」という問いtexiyama 問いについての話に戻しますけど、最近レトリカで作った『Rhetorica Journal vol.2』っていう小冊子に大都会と砂丘でのtofubeatsさんについて短い文章を僕が書いたんですよURL
tofubeats 拝見しました。
texiyama まあ前回tofubeatsさんにポコラヂにお越しいただいたときURLに、盛大に突っぱねられた大都会と砂丘の感想を元にした文章なんですが……。
tofubeats 論破されきったと話題の(笑)。でも『Rhetorica Journal vol.2』のやつはもうちょっとまとまってて良かったですね。
texiyama 論破されきりましたね(笑)。そこで言いたかったことは、やっぱり東京ってステージっぽいじゃないですか。けれども、ステージだけがあってもつまらない。色んなものがざわめいていて、競争もあったりするんだけど、単に芸能的になるのは面白くない。他方、ウジウジしてリアルなだけのものを提出しても全然面白くない。だから現実を変えていこうとする機運は、「あなたのリアルをステージで表現してください」という問いをいたるところで設定し続けることによって生まれるんじゃないかと。それによって、この街とかこの国はもっと面白くなっていくんじゃないのかなっていうのを個人的にずっと考えてるんですね。僕はやっぱり周りに何と言われようとこの話は突き通していきたい。やっぱり面白い方がいいじゃないですか。自分が生まれた街、自分が住んでる街は。
tofubeats うん。
texiyama そういう意味で今回のアルバムは、ステージで何かを表現すること、そしてtofubeatsのリアルな部分を表現することの2つがいい感じがバランスされてて、僕がここ2、3年くらい考えてたことの一つの回答があるなあと感じました。だからみんなにこのアルバムを買って欲しいし、多くの人にこれを良いって言って欲しいです。
tofubeats このアルバムを良いって言ってもらえたら、なんとなく仲良くなるハードル下がりそうな気はするんです。場所と問いの話で言うと、昔から神戸でやってきてるから、やっぱり自ずと考えさせられてて、神戸のことを好きな感じでやってますけど、同じくらい嫌いなんすよ。なんなら憎しんでる時間の方が長い気はする。でも、だからこそその裏返しで好きになりたいなっていう気持ちがあって頑張ってる。
texiyama 同じような話ですけど、ロンドンには東京よりも多様な人がいて、いろんな倫理で勝手に動いているっていうところにすでに問いがあるんだと思うんです。実際僕が向こうで過ごしている時、毎日「お前は誰だ」って街全体から問われてるような感じがしてました。たぶん留学した人は結構わかると思うんですけど、急にアニメをすげー見始めたりとかする(笑)
一同 (笑)
tofubeats それいい話やな。自分は日本を代表できない、みたいなことね(笑)
texiyama 僕は東京で生まれて東京で育ってきて、全然問いについて考えてこなかったんだけど、初めてロンドンで問いに気づかされた気がします。tofubeatさんの場合は、要は神戸から東京に出てきたっていうことからも地理的に問いが立てられているし、今回のアルバムからはそういったものを強く感じます。
tofubeats そうそうそう。だって東京にいたら、皆にとっての神戸の接点は俺しかないからね。DSC8551「ポコラヂ」という場所横山 じゃあ、今日は岡田さんも来てるんで。okadadaさんにも一言くらい。
okadada てぃーやまさん面白いっすね。
tofubeats いやほんまにね。やっぱこの番組は改めてtexiyamaさんの自分探しの旅なんやなっていうのを改めて……やっぱ『FANTASY CLUB』を通じて、まさしくtexiyamaさんが自分を見つけていくっていう、一番俺的には理想の聴かれ方。
okadada そうよね。一番いいリスナーといえばね。一つの形として。素晴らしい事やと思いますよ。
tofubeats そうそうそう。めっちゃ嬉しい。
texiyama いや、うん……うん……。
一同 (爆笑)
okadada 正面から見たらマジで滋味深い顔してんな(笑)
tofubeats いやだから、こういうのを客観的に見られるのめっちゃいやなタイプなんですよ。
texiyama 嫌ですよ。
okadada と言いつつこのラジオやってるっていうところがね、いいところですよ。

[2017年5月16日──於Red Bull Studios Tokyo]